コラム

2023/04/19

吊り編み機の魅力

私たちFACTORYブランドは、「吊り編み機」を約150台保有しています。
弊社の代表であり創業者が50年ほど前からこの「吊り編み機」に魅了され全国各地から集め保有してきました。
合繊会社のサラリーマン時代から化学繊維に違和感を持っていた創業者は、繊維産業に取り巻く厳しい状況や課題を改善したいという強い気持ちがありました。またその頃、自身に子供が生まれ「子どもの肌に優しい服を着せてあげたい」という思いが更に強くなりました。「吊編み機の魅力」である生地の柔らかを再認識した時、「吊り編み機」に懸けた思いと全てがリンクした瞬間でした。
柔らかくふっくらとした独特の吊編み機の生地の風合いは、一般的な丸編み機の生地とは違い、手編みのようなあたたかさで知られています。私たちはこの魅力的な吊り編み機から生まれた生地を「呼吸する生地」と呼んでいます。

 

職人も魅了する吊り編み機。

吊り編み機と一般的な丸編み機との違いとは。

吊り編み機の生地の魅力は生地の柔らかさ。

 

職人も魅了する吊り編み機

「吊り編み機」はその名前の通り天井から吊られています。
そして最大の特徴は糸の持ち味を壊さずに、編み目にゆとりを持たせながら ゆっくり丁寧に編み上げていく事です。糸の持ち味を壊さないいわゆる糸の風合いをそのまま生地に生かすことができるのです。
皆さんは手編みのセーターを編んだ事はありますか?それとも手編みのマフラーを貰ったことがありますか?
毛糸の膨らみをそのままに程よい優しさに包まれた感覚。そう。あの感覚に似ています。

「吊り編み機」の針は通称ひげ針と言いますが、丸い形をしています。のちに説明しますが、一般的な編み機の針はベラ針といい、平たい形をしています。吊り編み機は丸い針に糸がかかりニットさせて生地を作っていくのですが、この時も糸に負荷をかけずにニットさせる仕組みになっています。
その仕組みは針の上を「コマ」が走りその「コマ」が針を踏んだ時に針が沈みます。針が沈んだとき糸がニットされるので「糸が空気を含んだ状態」を保ってくれています。それがふんわりとした柔らかい編み地になっているのです。
丸い針にも意味があります。ふんわりと編まれるループが丸くなるからです。
ループが丸く編まれることは吊り編み機特有の事で、着心地に関連してきます。
丸いループは体形に合わせることができ、そして洗濯をすることによって重力や着用で伸びたループが元に戻ろうとします。
このため風合いを楽しみながら長く着用できるのです。
一目一目、一段一段編み込まれていく「吊編み機」ですが、まだまだ魅力があります。
吊り編み機は天井に吊られているとお話ししましたが、編まれた生地は機械から下へ下へと編み下がっていきます。この編み下げられた生地も重力に任せているので余計なストレスがなくゆったりとするのです。このできたてほやほやの生地に職人は魅了されてしまいます。

吊り編み機と一般的な丸編み機との違い

少し歴史を遡って見ます。明治の40年代から大正の初めにかけて、ヨーロッパから 日本では和歌山に初めて入った丸編み機の原点の機械が「吊り編み機」です。 当時は別名「スイスツール」と呼ばれていました。 アメリカ、中国に現在数台あるトンプキン編み機とも構造は異なります。 元来、天竺組織のみしか編めず、戦後に高級肌着を編むために使用されていましたが、 和歌山の職人が天竺以外の組織も編めるように改良し 裏毛などのスウェット生地が編めるようになりました。
一般的な丸編み機(シンカー編み機)は聞きなれない機械の名前ですが、私たちにとってはとても身近な存在です。誰もが1枚は持っているTシャツやトレーナーはほとんどがこの機械から作られています。
この一般的な丸編み機は高い生産性が特徴の一つであるので大量生産されるカットソーの生産に最適とされています。
先にもお話ししましたが、「吊り編み機」と「一般的な丸編み機」は生産量に大きな違いがあります。「吊り編み機」のTシャツ生地は基本的に1本の糸から、スウェット生地は3本の糸から成り立って編んでいますが、それに対して「一般的な丸編み機」は100本前後の糸で同時に編み込んでいくのでその生産量に大きな差ができるのです。
針の形状にも違いがあり通称ベラ針と呼ばれるその針は高速上下運動に強い仕様になっています。編まれた生地は機械の下部に巻き取られていく仕組みになっています。ある程度のテンションをかけて引っ張りながら巻き取っていきます。生地目は均一できれいに揃っており、機械の精密さが生地にも安定して表現されています。糸のバランスや組織などほとんど全てが機械によって制御される「一般的な丸編み機」。また、職人の匠の技術と技によって手編み風の独特の表情ができる「吊り編み機」。出来上がった生地は触れた瞬間違いが分かるほど柔らかさに差があります。
私たちの生産工場は双方の機械があり、お互いの長所や持ち味を上手く活用しながら生地作りをしています。

吊り編み機の生地の魅力は生地の柔らかさ。

丸編み機の原点『吊り』が生み出す究極の生地「吊編み機の生地」は、積み重ねた技術と日本の伝統の生地と言ってももう過言ではないでしょう。
「生地の魅力」はやはり柔らかさです。糸に負担がかからない様な針の仕組みや 編み目にゆとりを持たせながらゆっくり丁寧に編み上げていくその編み方で、糸そのものの柔らかな風合いを損なう事なく生地が出来上がります。糸はまさに空気を含み呼吸が聞こえてきそうなほど柔らかく仕上がります。
そして究極はその熟練の職人。時間を惜しまず丹念に編み上げていくという生地作りのプロです。
手作り感覚の呼吸する生地は空気と一体化し、絶妙なボリューム感が生まれます。柔らかくソフトでいてコシがある。 伝統の機械「吊り編み機」の生地の魅力は、生地の柔らかさを上手く引き出す、匠の職人の技術そのものです。

私たちの生活を向上させるデザイン

職人による技術と商品開発に対する確固たる考えを持って生まれた工場発信の生地は、素材、企画、編立て、デザイン、縫製まで、一貫し国内で行っています。 熟年の匠の技術と新しい企画やこだわりのデザインを組み合わせ、最高品質の製品をつくっています。 私たちは、これからの未来に寄り添うべく、真のニーズに応えるため、素晴らしい品質と耐久性に優れた製品が実現させ、新製品を発売しています。


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